どうしたら、人の「こころ」を理解できるのか?
過去の研究者たちが考えてきた方法と、現在、たどりついた心理学の研究・理解について説明します。
本人の中で感じたことを報告する実験「内観報告」
心理学では、実際の実験や体験などに基づいたデータに基づいて、人間のこころを理解しようとしています。
心理学の歴史は、とても古く、詳しい歴史については、ここでは割愛します。
現在の心理学に繋がる研究が行われはじめたのは、19世紀頃から。
はじめは、成人のヒトが、実験によって感じたことをデータにする「内観報告」というものが行われてきました。
内観とは、心理学的に言うと、
心理学で、自分の意識やその状態をみずから観察すること。内省。自己観察。
デジタル大辞泉「内観」2より
ということ。
つまり、実験は、研究者自身や、そのお仲間さんがやってみて、感じたこと、反応なんかを報告したものをデータとして収集していたことになります。
でもそれは、ほとんどが成人の人間。
それだけでは、データとしては薄いな、ってことで、研究者自身の子供や、動物でも実験を重ねるようになりました。
子供や動物での研究
子供は、人間が生まれてきて成人になるまでの発達の過程ですよね。
脳や、身体的には、成人より未熟と言われている段階で、どんな心理を持っているか、赤ちゃんを対象にした研究がされてきました。
これを、個体発生的なデータといいます。
そして、チンパンジーやイヌ、トリなど動物での実験は、生き物の進化としての過程で、どんなこころの反応があるかを実験してデータを集めたものです。
これを系統発生的なデータといいます。
これらの分析に加えて、さらにこころの理解を深めるためには、
健康ではないこころの状態についての研究も重要とされてきました。
こころの病や悩みを持っている人への理解
こころが健康でなくなった人に対しては、心理学を用いた援助が必要となってきます。
そのためには、実際に精神障害を持っている人の話に直接耳を傾ける必要があります。
でも、その人が話していることのすべてが、事実とは限らない。ということを念頭に置かなければなりません。
言葉で表現された情報が、そのままこころの状況と、必ずしも一致するわけではないからです。
この言葉による報告は、こころの状態を知る上での一時的な情報であることを忘れてはいけません。
これを材料に、病んでいる人のこころの状態を推理するのです。
行動を研究する行動主義が登場
これまで書いてきた、子供や動物の研究、また、精神障害を持った人に対する考察を重ね、
内観報告(当事者が実験で感じたことなどを報告する)だけでは、こころの働きを理解するには不十分だということが分かってきました。
そこで20世紀はじめに、ワトソンさんという人が、「行動主義」を主張しました。
行動主義とは、誰が見てもわかるような刺激(stimulus)と、それに対する反応(response)の関係(S-R結合)を明らかにすることです。
ですが、ワトソンさんは、あまりに性急で極端だったために反感を買います。
人の反応を、ただの筋肉の収縮や、腺の分泌だけと捉えてしまい、
「何を考え、どう感じたか」という、こころの内面についての意識を無視した研究だったので、
「こころなき心理学」「意識なき心理学」と呼ばれ、反感を買いました。
ワトソンさんの恐怖条件付けの実験
赤ちゃんに、白ネズミを見せ、その時に後ろで大きな音を出してびっくりさせる実験を何度か繰り返す。
赤ちゃんは、初めは白ネズミに興味を示したが、びっくりさせられるうちに、姿を見るだけで泣くようになる。
さらには、白いものを見ただけでも泣くようになった。
この実験で、ワトソンさんは、
子供を何人か集めて環境が整えば、思う通りの人間に育てることができる
なんてことまで言ってしまったから、大批判を喰らった。
それでも行動主義は大切な要素があった
ワトソンさんのやり方は、極端過ぎて反感を買いましたが、この行動主義も、心理学を科学的なものとして確立させるためには大切な要素でした。
ワトソンさんの研究をもとに、その後は、外からでは分からない「こころの内側」を、どうやって客観的に捉えるか?
が、大きな課題となりました。
現在の心理学におけるこころの理解
現在は、この「どう考え、どう感じたか」を、行動や反応から分析したデータをもとに理解を深めています。
アメーバなどの単細胞から、チンパンジーやヒトまで、この進化の過程の中で、「こころ」というものを持ちはじめるのはどの生命体なのか、
それをハッキリさせることは困難です。
なので、心理学では、あらゆる生命体の行動を対象にします。
また、基礎的な心理学をベースに、応用的な心理学が研究されています。
それは
- 教育心理学
- 臨床心理学
- 犯罪心理学
- 産業心理学
- 交通心理学
などです。
今日の勉強はここまで!また次回に!
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